八商20年ぶり勝利!満塁弾など猛攻15安打

20110807-511633-1-N.jpg 夏の全国高校野球大会2日目の7日、5年ぶり7度目出場の八幡商は山梨学院大付(山梨)と対戦し、白石智英の満塁本塁打など15安打の猛攻で快勝した。夏の甲子園では1991年以来、20年ぶりの勝利。2回戦は8日目第2試合で、帝京(東東京)と対戦する。

 八幡商は三回一死一、三塁、1番高森健太が左前適時打を放つと、さらに安打が続いて満塁。3番白石は、内角に食い込んでくる変化球を引っ張ると、左翼席に飛び込む大会史上36本目の満塁本塁打となった。この回は打者11人で計6点。白石は六回にも左翼線を破る2点適時二塁打を放ち、一人で6打点を稼いだ。

 先発吉中佑志は、山梨大会のチーム打率が4割を超える相手打線に10安打を浴びた。しかし、要所で直球、変化球を低めに決めて2併殺を奪うなど、粘り強く投げて1失点でしのいだ。

 池川準人監督は「ヒットがつながる理想的な展開。ベストゲームだった。吉中は直球が良かった。バントの失敗と、少し乱れた守りを次戦までに修正したい」と話した。

好捕で流れ手放さず

 五回一死満塁のピンチ。二塁手の高橋駿は、「飛んできたら、絶対に捕ってやる」と、打席に入った山梨学院大付の主軸打者の一人、丸山陵司を見つめていた。

 「ゴロを打たせてゲッツーを取る」。捕手の日紫喜雄介は、エースの吉中佑志に低めのカットボールを要求した。しかし、吉中が投じた球は高めへ浮いた。

 丸山のバットから放たれた打球は痛烈なライナーとなって右翼方向へ。「やられた」。日紫喜が打球の行方を目で追った瞬間、高橋が高くジャンプしていた。

 高橋は冷静だった。「これなら届く」。打球は左にそれながら飛んできたが、目いっぱい伸ばした左腕のグラブに球はすっぽりと収まった。ボールは二塁に入った遊撃手の白石智英にトスされ、併殺が完成した。

 三回に飛び出した白石の満塁弾などで試合を常に優位に進めていた。しかし、四回に1点を奪われ、五回の攻撃では相手の好守備で好機を断たれ、ムードは傾きかけていた。それを引き戻す好プレーだった。

 試合終了後、高橋は「右打者の強い打球は、守備練習で繰り返し捕っていて自信はあった」とさらりと語った。要所を締めて完投した吉中は「高橋が捕ってくれたのは本当に大きかった。みんながきっちり守ってくれたので、楽に投げられた。今日の勝ちは野手のおかげ」と振り返った。

 この日の試合は打線の好調さが目立ったが、本来の「八商野球」は守備が持ち味。主将の白石は「次の試合も自分たちの野球を見せたい」と誓った。大舞台でも自分たちのスタイルを貫いていく。(矢野彰)

「天八魂」打ち鳴らす

20110807-511670-1-N.jpg 一塁側アルプス席は保護者や地元住民らが駆けつけ、今大会最多の観客約4000人で埋め尽くされた。

 同校関係者以外の応援客には、細長く膨らませて使うスティック状の応援グッズが配られた。グッズには、全国を行商して歩いた近江商人の魂をうたった、「天下の八幡商業魂」を略した「天八魂」とプリントされており、応援客らは2本のスティックを打ち鳴らしながら大声援を送った。

 白石智英主将の父で保護者会長の英治さん(56)は「近江商人のように粘り強い天八魂を見せつけてほしい」と話していた。

幼友達思い全力プレー

 一挙5点を先制して盛り上がる一塁側スタンド。三回二死走者なしで迎えた第2打席で、自分に言い聞かせた。「安全圏の点差なんかない。ここで試合の流れを切らせない」。外にそれる変化球を見極め、5球目の直球を強振した。鋭い打球が三塁手のグラブをはじいた。続く今井一貴の右前打で「打球の強さから行けると踏んで」一気に三塁へ。高橋駿の右前適時打で6点目のホームを踏んだ。

20110807-511651-1-N.jpg 転勤族の父の都合で、幼稚園から小学5年まで甲府市で過ごした。近所の友達と神社で野球をしたこと、転校がショックだったことは今も覚えている。

 抽選会の時、「山梨代表と当たれば面白いな」とぼんやり考えていた。対戦が決まり、縁を感じた。幼い頃の友達とは疎遠になっている。「誰かがテレビで気付くかも知れない。気の抜けた姿は見せられない」。全力プレーを心に決めた。

 県大会では打率が5割を超えたが、この日は1安打。「チームが勝てば何でもいい」としながらも、「次の相手は帝京なので注目度も高い。活躍の機会はまだある」。額の汗を、笑顔でぬぐった。

2011年8月8日  読売新聞)